【まとめ】メンタルヘルス フェスティバル アジアで得た、組織のウェルビーイングを高める 6つのヒント

職場のポジティブメンタルヘルス
Joyce Yang
Nov 18, 2022

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10月10日の「世界メンタルヘルスデー」を目前に、Intellectは9月29日(木)と30日(金)に「メンタルヘルス・フェスティバル・アジア 2022」を開催。オフィス出社が徐々に再開し、職場での働き方が再構築される今、アジアにおけるメンタルヘルスを取り巻くスティグマや境界の「限界を押し広げる(”Pushing Boundaries”)」をテーマに掲げました。

1,000人以上が参加したこの2日間のイベントは、ビジネスパーソンのウェルビーイングに焦点をあて開始。シンガポールの国務大臣Sun Xueing氏、Google社やMicrosoft社の人事責任者などが講演し、職場におけるメンタルヘルスについて意見を述べ、職場に変化をもたらすためのベストプラクティスを共有しました。

1日目のハイライトはこちら

メンタルヘルスは白黒ではなく、グラデーションである

シンガポールのSun大臣は基調講演にて、組織はメンタルヘルスの重要性を理解し、そしてアジア特有の企業文化・経営戦略も共に考慮する必要があると指摘しました。「社員に命令してコントロールするのではなく、どうすれば信頼関係を築き、鼓舞することができるのでしょうか?」同氏は参加者に問いかけます。

そのためにはまず、メンタルヘルスや関連する問題が「白」か「黒」の二択ではなく、グラデーションであることを認識しなくてはいけません。「誰かが精神的な悩みを抱えていても、その人が精神衛生学会に行くべき患者だとは限りません」。「健康」と「病気」といった二分論を超える認識を持つことで、メンタルで悩める人が感じる社会的なストレスや不安を和らげるとSun大臣は話しました。働く人が自らの状態に合ったサポートを受けられるよう、企業、行政などのステークホルダーが一眼となり取り組む必要があります。

一人ひとりが変化を起こせる

アジア諸国では、消費者の84%が民営のメンタルヘルス保険に関心を持っているにもかかわらず、保険業者の1%しかメンタルヘルスを優先事項として見ていません。

Swiss Re社 パートナーシップ&プレポジションイノベーション・グローバルリードのLauren Liang氏、United Overseas銀行 バンカシュランス グループリードのBen Toh氏のパネルでは、Liang氏は「政策立案者は準備ができていない」と説明しました。「このギャップを埋める努力は市場が主導しなければなりません。消費者が懸念を表明し、企業がそれを受け止め、保険会社や再保険会社が提供者と協力し、ニーズに対応する必要があります。つまり、その他のステークホルダーは率先して物事を進める力があるのです」。

「視聴者の皆さんの中には、組織に変化をもたらす力を持っている人もいるはずです。私が皆さんに伝えたいことは、これらの課題は根本から取り組まなければならないこと、そしてぜひ行動に移していただきたいということです」。

職場のウェルビーイングはオンボーディングだけで終わらない

1つの組織をとってみても、職場のメンタルヘルスに関する認識は人により異なります。Aon社ウェルビーイングコンサルタントのErica Stein氏とAlea社 共同創設者Julien Mathieu氏のパネルでは、3つのギャップが挙げられました。

その1つがリソースと実際の利用率。経営役員の立場からすると十分なサポートを用意しているように見えても、従来のEAP(従業員支援プログラム)の利用率はその逆を示します。さらに、経営陣の賛同が得られても、ウェルビーイングの取り組みにおける効果は組織文化やコミュニケーションに左右されます。

「(ウェルビーイングやメンタルヘルスの)サポートは、オンボーディングやメンタルヘルスデーだけでなく、社員が日常的に感じられる必要があります。助けが必要な時に社員はどこに行けば良いか分からないことさえあるのです。社員に対し定期的に周知することに加え、マネージャーにはツールを提供したり、会話の技術を学んでもらうことが重要です」とErica氏は説明した。また、心理的安全性の欠如も現場と上層部との間に矛盾を生み出すと同氏は述べます。

「実際の調子はどうなのか、利用可能なリソースについて本当はどう思っているのか — 社員は正直な意見を述べることにためらいを感じているかもしれません」。

ブランディングだけでは片手落ち — 企業文化も必要だ

人材の採用や確保においても、企業ブランディングに負けないほど企業文化や経営理念が重要です。Microsoft社 シニアHRコンサルティングマネージャーのJan Philippe Tanchi氏もJulien氏の想いに共感しました。

「ブランディングは人を入り口まで連れて来てくれますし、ほとんどの企業はすでに優れたブランディングをしています。ですが、人材確保に最も重要なものは文化です」とJan氏は語る。Microsoft社は成長志向の文化を育んできた。「これはMicrosoft社の社員にとって最も重要な要素で、この文化により失敗しても立ち直るための安心感が得られる。また社員は新しいアイデアを提案したり、質問ができると感じている - これはZ世代などの新しい世代が特に大切にしていることです」。

しかし、求職者はどのように企業の文化を知ることができるのでしょうか。Google社のグローバルHRオペレーションズディレクター Gilberto Gaeta氏は、次のようなコツを紹介しました。

「会社の価値観に関するひとつの質問を複数の面接官に聞くことをお勧めします。全く同じ回答は望ましくありませんが、少なくとも共通したメッセージは持っているはずです。こうすることで、その会社の誠実さが理解できるでしょう」。

エンドユーザーと共創する重要さ

マーケティングでは、ターゲット顧客を理解するためにフォーカスグループを設けて調査します。社員に提供するウェルビーイング施策も同様に調査をするべきではないでしょうか。

Mercer社のパートナーでありヘルスリーダーでもあるNeil Narale氏は、「企業が単独で決めるのではなく、社員にとって何が重要かを見極め、ウェルビーイングへの取り組みを一緒に作るべき」だと話しました。同氏の会社は2020年のロックダウン中に、予算の使い道を皆で考えるブレストを行ったと言います。「とても有意義でした。社員は自分も発言権があると実感でき、社員一人ひとりのためにどう福利厚生を活用すれば良いのかを自分ごととして考えてくれました」。オフィスに復帰した社員らは、自ら職場環境を整えることに深く関心を持っているとのことです。

同様にThe Secret Little Agency社の社員は統括マネージャーのLin氏に働きかけ、ロックダウン中に「Sacred lunch time(誰にも邪魔されない昼食時間)」の導入など様々な取り組みを実施しました。最近は、旅行に飢えている社員のために1,000ドルの旅行費の支給制度を始めたと話します。

「施策を打つことだけを考えずに、長期的な視点における導入やその後のエンゲージメントを意識することが、このような取り組みの成功の鍵となります」。

社員を承認し、マネージャーに活力を与える

「メンタルヘルスについて語る」リーダーシップ編にて、McDonald’s社シンガポール専務取締役のBenjamin Boh氏は社員をオープンな場で承認する、自社のRICOフレームワークを紹介しました。

「オペレーション担当者が店舗に行き、『それは正しく出来ていない』と指摘するのは簡単です。ですが、現場の人は単に指摘されても簡単に改善できるものではありません。代わりに、社員一人ひとりを認めることで、その人は『自分は良い結果を出せる』と感じるようになります」とBenjamin氏は説明します。「(RICOフレームワークは)導入1日目から変化が起きた訳ではなく、意識の転換を要しました」。

ポジティブ・リーダーシップは大きな違いを生み出します。しかし、管理職の人材選択も同様に重要です。「私が苦労して学んだことは、人のマネジメントが大変な役割だということ、そして誰にでも向いている仕事ではないということです」とCarousell社CEO兼共同創設者Quek Siu Rui氏は語ります。「マネージャーを目指している人たちが成功するためのサポートも必要だ」。コロナパンデミックの最中、Carousell社は様々な地域のマネージャーが互いにサポートするための「COVIDリーダーシップコール」を作成しました。

「リーダーシップは孤独な旅です。一人で進むべきではありません」。

(翻訳: Yoshie Baranauskas)

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社員が元気な会社は、幸せな会社

多くの社員がメンタルヘルスの課題を抱える現代。
それを放置すると、生産性の低下・バーンアウト・離職などの問題に発展します。
Intellectはそれらの問題を事前に防ぎ、組織全体のウェルビイーングのサポートをします。