働く女性に燃え尽き症候群が多い4つの理由

女性に燃え尽き症候群が多い4つの理由

メンタルヘルス
Team Intellect
Jan 24, 2023

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30代後半のシンガポール女性Cさんは、ずっとキャリア志向でした。グローバル企業の管理職で、仕事での責任にプライドを持っています。しかし、二人の幼い子どもを抱える母親として、パンデミック時にCさんは退職を考え始めました。

理由はシンプルで、燃え尽きたのです。

「いつも疲れていて、疲れていない時のことを思い出せないほどでした」とCさんは言います。「楽しんでいた仕事に対して、以前と同じような気持ちが持てません。今はただ、やり過ごしているだけです」

Cさんが感じている燃え尽きは、世間的にもよく見られる事象となってきています。アメリカで巻き起こった「大量離職」は、人々が職場でのプレッシャーやストレスに悩まされており、もはや耐えきれなくなっていることを顕著に示した例でしょう。

しかし、燃え尽き症候群の影響については、性別による違いを考慮する必要があります。

6万5千人のアメリカ人を対象にしたマッキンゼーによる2021年の研究「Women in the Workplace」では、男性の35%に対して、女性は42%が燃え尽き症候群であることがわかりました。LinkedInによる調査でもこの性別による違いが見られ、仕事に関係するストレスを感じている人は、男性が61%であるのに対し、女性は74%にのぼりました。

国際女性デーを記念して、会社のイベントに参加したり、花を送ったり、SNSのバナーをつくったりすることはできます。しかし、それと同等に大切なのは、現代の働く女性が直面している課題を理解することです。

なぜ燃え尽き症候群が高い割合で女性に起こるのか — その原因を理解することなしには、女性のメンタルヘルスに対する適切な行動やサポートを提供することはできません。

女性が燃え尽きを感じる4つの理由

燃え尽き症候群は異なる性別、国々、職場における役職で見られるものですが、女性はその中でも特有の問題を抱えています。以下に説明するような女性に対するプレッシャーに加えて、世界的な景気後退やパンデミックがあったことで、燃え尽き症状のさらなる悪化につながっているのです。

家族・家庭内の世話役としての役割

多くの女性はフルタイムの仕事に加え、育児や家事も多く担っています。

2020年11月国連のレポートを参照

国連の報告によると、女性は、男性に比べ家庭内の無給の仕事を3倍近く行っているといいます。

APACでは、女性が世話役として無給で費やす時間は、男性の4倍にまで増加しており、インドでは10倍、カンボジアとパキスタンでは11倍にまでのぼります。パンデミックにより学校が閉鎖され、医療システムが限界に達すると、家事や高齢者の介護、さらには子どもの教育者としての役割も、女性の肩にのしかかります。

金融業で出張が多い夫を持つCさんは子どもの世話と家事の多くを担っており、それが結果的に、仕事に割ける時間に影響してきました。

「誰も表立っては何も言いませんが、子どものために早退したり休みをもらうとき、ジャッジされているように感じます」

果たすべき責任と配慮の多さにより、女性の精神的な負荷は男性よりも多くなりがちです。

家事をまわし、子どもの幸せと教育に気をつかい、病人や高齢者の面倒をみるためといった仕事が山積みになると、働く女性はじわじわとすり減っていきます。Great Place to WorkとMavenの共同研究では、働く母親が燃え尽きを経験する可能性は、働く父親に比べ23%も高いことがわかりました。

新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界中の女性は、換算すると約110億時間にものぼる4分の3の無給の家庭内の役割を担うことになり、これが不平等をさらに悪化させました。

世話役としての仕事の負担は、働く女性にとってフルタイムの仕事からパートタイムへの移行、もしくは仕事そのものを辞める選択にもつながります。AWAREのアドボカシー、リサーチおよびコミュニケーションヘッドのShailey Hingoraniは以下のように話します。

「問題は、家庭内の仕事が無給であるということです。表立っては見えづらく、また主に女性の役割とされます。(中略)これは社会として、わたしたちは意識的でも無意識的でも、女性の労働に正しい価値を与えていないことを示しています。結果、清掃など低賃金の仕事に就く女性が多くなってしまうのです。女性はそういった仕事を自発的に選んでいるとされ、それには一部真実もありますが、そもそも女性にそういった仕事を選ぶよう強制しているという構造の問題を見過ごしています」

職場における感情労働

感情労働」という言葉は生活の中の見えない努力を説明するもので、2015年によく使われるようになりました。作家のGemma Hartleyは「無給で、気付かれないことも多い、周囲の人々が心地よく幸せにいられるようにするための労働。感情管理と生活管理を合わせたもの」と説明しています。

先に紹介した無給の家庭内の役割が想起されますが、感情労働は職場でも見られることがあります。

家庭のケアのための「配慮の仕事」に加え、女性は同僚の感情に気を配り、快適な職場環境をつくるために特別に動くことがよくあります。女性はパーティーの計画やチームの懇親活動、贈り物の手配など「人」に関わる仕事を任される傾向にあります。

議論を和らげたり、チームの新人の面倒をみたりとストレスのかかる場面で、女性は自分の意志で、同僚を支える傾向にあります。

クリエイティブ会社で役員を務める27歳のSさんは、すでにある大量の仕事に加え、同僚を精神的に支えるためにさらに時間を割くことがあると言います。

「仕事にストレスがかかると、アドバイスを求めたり、あれこれ愚痴を吐き出す場として、みんな私のところにやってきます。はじめは必要とされることが嬉しくて積極的に相談を受けていましたが、わたしも燃え尽きを感じている今、この役割を担うのは困難です」

皮肉にも職場を支えるこの役割が示すのは、女性は男性よりも職場の燃え尽き症候群と戦うために労力を割き、そのことが彼女たちの感情やメンタルウェルビーイングに悪影響を与えているということです。この労力には、チームの状況把握の時間を確保したり、業務量を調整したり、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)に取り組んだりすることが挙げられます。

マッキンゼーによると、上級管理職の女性が職務範囲外でDEIの取り組みに時間を割く傾向は、男性の2倍にのぼります。企業は明るい職場環境を作り出す感情労働を認識し報いる必要がある一方、Hartleyは感情労働に関して優先順位や境界線に気を配るよう女性に呼びかけています。

「感情労働が必要であるときと、そうでないときを認識する必要があります。感情労働はもともとは悪いものではありませんが、時間と精神的なエネルギーの負担がかかるため、すぐにやり切れなくなってしまいます」

壊れたはしご

壊れたはしご」という言葉は、上級管理職や経営幹部への昇進おいて、女性に対するハードルが男性よりも高い状況を表しています。さらなる努力もむなしく、女性は職場でチャンスを与えられることが少ないのです。

100人の男性が昇進し管理職として雇用されるところ、昇進する女性は72人のみです。さらに、男性は管理職級ポジションの62%を占め、女性はたった38%です。シンガポールでは、10〜11%の賃金格差により、女性は40年間で64万ドルの収入を失うと、AWAREは発表しています。

この長期的な課題は世間に知られることはあっても、公に認識されることは多くありませんでした。職場でのプレッシャーは男女にかかわらず多くの人に影響を与えますが、昇進や昇給における不利な状況があれば、女性がやる気をなくす原因になるのも仕方ありません。女性は出世するために男性より働く必要があるのに、認識される機会や報酬が少ない。その過程で、多くの女性は燃え尽きてしまうのです。

このような環境にいる女性が、仕事と精神的に距離を置いたり、離職に至るのも無理はありません。マッキンゼーの研究では、3人に1人の女性が今年中にキャリアを降りるか離職を検討しており、10人に4人の女性はすでに今の仕事を辞めようと思っていることがわかりました。マッキンゼー・アンド・カンパニーでシニアパートナーを務めるAlexis Krivkovichは次のように話します。

「企業は瀬戸際に立たされています。もっと努力すれば、この内省のタイミングを生かして勝ち残ることができます。しかし、そうしなければ、有能でダイバーシティに富む人々はこう考えるでしょう『さらなる労力をかけているなか、会社がその労力に形として報わないとしたら、自分は投資に対して適正なリターンを得ているのだろうか?』」

燃え尽き症候群を取り巻く罪悪感

外的な要因が燃え尽き症候群を引き起こしうる一方、臨床心理学者のLinda Rinnは、罪悪感による燃え尽き症候群の影響の悪化も観察しています。

「すべきだった」「すべきでなかった」といったような思考のパターンは、すでに燃え尽きを感じている人にとって、さらなる不安やストレスを生む罪悪感のサイクルの一部です。

Intellectのメンバーである臨床心理士Linda Rinn

Lindaによると、そういった罪悪感は様々なテーマを取り巻いており、子どものケア(子どもと過ごす時間を増やすべき)や仕事(あのメールに返信しなければ)、自己研鑽(言語学習に時間を割くべき)や、セルフケア(もっと休まねば、食事に気をつけねば)などが挙げられます。

助けになるどころか、こういった思考はすでにストレスの多い環境にいる人を傷つける可能性があります。

Lindaはこの思考パターンは女性に多く見られるとしており、いくつかの研究もその傾向を示しています。Europe’s Journal of Psychologyの論文では、幼少期に植え付けられた性役割が、性別ごとの「罪悪感の傾向」に違いを生んでいる、としています。心理学者であり作家のCarol Gilliganによると、男の子は規則を破ることに罪悪感を感じやすい一方、女の子は行動の結果が関係する場合に罪悪感を感じやすいそうです。

女性の燃え尽き症候群に対する反応は、休みをとった場合に人々を落胆させることへの罪悪感です。Cさんは「もちろん休みたいです! でも同僚や家族、特に子ども、みんな私を頼りにしているのです。どうしても休めません」と言います。

Sさんも似た意見を持っています:「もっとうまくやるべきことがたくさんあるのに、できていないのです。休みをもらえるようなことを成し遂げたように思えません」

女性が燃え尽き症候群を克服するには?

この問題に対し、私たちは何ができるのでしょうか。燃え尽き症候群の経験は各自異なり、万能薬ではないとしながらも、Lindaは燃え尽きを感じている女性に対して、メンタルヘルスを再定義する方法をいくつか提案しています。

助けを求める

パートナーや家族、雇用主やLindaのような医療専門家に助けを求めることです。負担の軽減や、燃え尽き症候群に対処する方法を探る会話のきっかけとなります。

責任範囲に専念する時間を持つ

負担が多すぎる女性には難しいかもしれませんが、様々な役割(会社員、母親、掃除担当など)を持つ人にとって、各役割に専念する時間を持つことが、思考を区切り、認知の負担を軽減する手助けになるでしょう。

例えば、8時から17時は会社員としての役割に専念する時間とし、早くもなく遅くもなく、その時間を厳守するのです。しかし、Lindaはこの方法を取ることが難しい人もいると理解しています。

自分への言葉を変える

Lindaは、「すべき」や「してはいけない」など自分にかける言葉を意識し、適切に返答するよう提案しています。

例えば以下に返答します:

  • 思考:今日は運動すべきだった。
  • 返答:そう考えるのはいいことだけど、今日はストレスフルだった。

返答したあと、思考を手放し、その日起こったことをありのままに受け止めます。

燃え尽きを感じている人を助ける

燃え尽きを感じていて助けが必要そうな人が周囲にいれば、結論から入らないことが重要です。ニーズを理解しないまま、必要とする助けを決め込むことは、逆効果になりえます。Lindaはまずは会話を始め、どのようにサポートできるか尋ねることを提案します。しかし、会話を始める前に気をつけることがあります。

まず、自分自身について話すことから始め、対立的に聞こえないようにすることです。相手の燃え尽き症候群の経験についての会話は役立ちますが、直接的に働きかけると、多くの人は罪悪感を抱え、攻撃されているように感じることもあります。

代わりに「近頃〇〇や□□のように感じているんだけど、あなたもそう思う?」と言ってから会話を始めましょう。

もしくは、最近経験したこと、燃え尽き症候群に関しての記事を読んだことなどに関連付けてもよいでしょう。

「燃え尽き症候群に関する記事を読んだのだけど、〇〇や□□と書いてあった。そんなふうに感じることがある?」

耳を傾けたあと、可能なヘルプを提案し、そのままオープンにしておきましょう。「なにかできることはある?」と聞いても、相手はいいえ、と答えるかもしれません。それでも、相手はあなたを、助けたいと思ってくれている人として認識します。助けが必要なとき、あなたに声をかけてくれるでしょう。

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