仕事では、様々なタイプの上司に出会いますが、その中でも聞く耳を持たない上司にイライラした経験がある方は多いのではないでしょうか。特に中間管理職は、その状況に立たされることが多く、最悪の場合、心無いと感じるような扱いを受けることもあります。
上司が自分の意見に耳を傾けてくれないと感じたことがあるのは、あなただけではありません。事実、調査によると、権威的な立場にいる人は、部下や専門家のアイデアを拒否する傾向があることが分かっています。このような方法は、短期的には苦痛を引き起こし、長期的には組織の効率性を低下させます。これは、社員が最終的に黙ってしまい、リーダーが重要なメッセージを見落とすことにつながることもあります。
フィードバック:McCombs School of Businessの研究によれば、上司は自分の意見に沿わないフィードバックを受けると、カクテルパーティー効果とも呼ばれる「選択的聴取」に陥りやすいことが判明しています。確証バイアスが部下の意見に耳を傾けないことを引き起こし、組織は部下の意欲を失う代償を払うことになります。
仕事の問題:調査によると、上司がフィードバックに対して有効な対応をすると回答した社員はわずか23%でした。筆者のコーチングのクライアントの1人は最近、ある企業ポリシーに関して上司にガイダンスを求めましたが、解決策が見つからなかったと話していました。これは、自分のミスの責任を問われることになり、彼女にとってストレスとなります。
アイデア:クライアントとのセッションでは、私はクライアントが話してくれるアイデアや会社への提案に感銘を覚えることが多々あるのですが、多くの場合、その意見は無視され、クライアントは自分の貢献が評価されていないと感じて帰ることになっています。
上司が話を聞かない場合
優秀なリーダーは、従業員の意見を尊重し、聴くことができます。従業員の視点を理解し、議論を歓迎し、意見の相違を解決することが重要です。これができていないと、コミュニケーションが不適切になり、従業員との関係が悪くなる可能性があります。
ただし、上司に能力がないと判断する前に、まずは相手についての理解を深める必要があります。例えば、上司があなたの望む行動をとらない場合、以下のような理由がある可能性もあります:
文化の違い
欧米の職場では、リーダーはフレンドリーな存在であるべきと考えられがちですが、アジア圏では違います。リーダーは指示する権威的な存在として認識されるアジアでは、社員は命令を実行する立場になりがちです。この文脈では、上司の意見と対立する発言は「失礼」と見なされる可能性があります。
優先度が低い
良いアイデアが受け入れられない理由として、上司から見た場合、優先度が低いことが考えられます。組織の他の従業員と同様に、上司にも特定の役割と責任があり、それによって上層部からパフォーマンスが評価されます。もし、あなたの指摘する問題が上司のToDoリストになければ、的外れな意見と見なされる可能性はあるでしょう。
コミュニケーションスタイル
コミュニケーションスタイルには、受動的、攻撃的、消極的、積極的など様々ですが、最初の3つは理想的ではありません。例えば、攻撃的なコミュニケーションスタイルをとるマネージャーは、否定的なフィードバックを受けたときに「あなたは間違っている!」と断固否定するかもしれません。同様に、上司に対して消極的な対応をすると、人間関係が悪くりかねません。
DEAR MAN GIVE FASTのフレームワークを使おう
上記の理由のうち、唯一コントロールできるのはコミュニケーションスタイルです。そこで、受動的・消極的な社員は、どのように健全な自己主張をすることができるのでしょうか。
筆者は弁証法的行動療法(DBT)の実践者として、「DEAR MAN GIVE FAST」のフレームワークを用いて、個人が対人関係を改善し、維持するための支援を行っています。同僚に何かを依頼する場合や、対立を解決する場合にも、周囲に敬意を払いつつ、自分のメッセージを効果的に伝えるのに役立つフレームワークです。
例えば、新しい会社の方針では、リモートで仕事する際に毎時の行動を記録することが求められているとします。このようなマイクロマネジメント的措置は、チームのワークフローを乱すだけでなく、会社と従業員間の信頼関係を損なうことにもなりかねません。生産性や士気も低下するでしょう。これを見かねたあなたは、意見を上層部に伝えることにしましたが、上司が真剣に受け止める様子はありません。
このような状況で、どのようにフレームワークを適用すればいいのでしょうか。3つのステップのうち、最初のステップ「DEAR MAN」においては、事実を客観的に、判断しないで伝えることが重要です。
- Describe(説明する):「私は、新しい方針がチームの生産性と士気に影響を与えていると気づきました」
- Express(表現する):「チームメンバーがやる気を失っているように見えるので、私は悩んでいます」
- Assert(主張する):「新しいポリシーの〇〇は説明責任を果たすために重要だと考えていますが、記録の頻度はもっと少なくても良いと思います」
- Reinforce(意見を強める):「この変更は、全体の成果と企業文化に利益をもたらすと思います。他のチームのリーダーもこの問題に直面しています」
- Mindfulness(マインドフルネス):意見を述べるときは、トピックである会社の方針に集中し、話題を変えないように心がけましょう。
- Appear(見え方に注意を払う):自信があり、頼もしく見えるように心がけましょう。意見を共有するときは、アイコンタクトを保ち、敬意を払った声のトーンで、説明しすぎないように注意しましょう。
- Negotiate(交渉する):上司との調整の準備をしましょう。例えば、次のように提案できるかもしれません「記録の頻度を減らせば、日々のスタンドアップミーティングに費やしている時間を、深い集中力を要するディープワークに当てることができます」。
第二ステップの「GIVE」は、会話中の上司との関わり方についてです。
- Gentle(穏やかな態度):身体的、言語的に圧力をかけるのは避ける。
- Interest(関心を持つ):上司の話に耳を傾け、納得のいくまで質問する。
- Validate(相手の正当性を認める):「メンバーが何に取り組んでいるのかを把握することが重要なのはわかります」。
- Ease(気楽に): 笑顔で、ユーモアを交えながら話します。
最後のステップである「FAST」は、終始自尊心を保つことを目的としています。
- Fairness(公平さ):「方針を変えるのは骨の折れる仕事だと理解しています。しかし、現在の解決策が持続可能ではないことを懸念しているのです」
- Apologies(不必要な謝罪をしない):周囲に敬意を払いながらリクエストをするならば、誰に謝る必要もありません。
- Stick to your values(自分の価値観を貫く):譲れない自分の信念は、大事にしましょう。
- Truthful(誠実であること):自分の主張を通すために、状況を誇張したり、嘘をついたりしないようにしましょう。
すべて試しても解決しない場合、ラジカル・アクセプタンスを試みる
自分がコントロールできない状況を受け入れる能力は、苦しみを和らげることに役立ちます。ラジカル・アクセプタンスとは、不快な感情を抑えたり、現実を否定したりすることではありません。辛いことがあっても、感情的な反応に囚われることなく、自分の意見や感情を注意深く観察することを指します。
上記の方法をすべて試してみても、上司が話を聞いてくれない場合、以下のような言葉を次自分にかけてあげることをおすすめします:
- 過去にあったことに囚われるのではなく、今この瞬間に意識を向けて、必要なことに集中するのを優先しよう。
- 上司には腹が立つかもしれないけど、チームの状況を効果的にマネジメントすることはできる。
- 必要以上に怒ることなく、自分の状況を受け入れることは不可能じゃない。
- 上司も一人の人間であり、完璧な人間など存在しない。
コーチングでコミュニケーションの達人になる
話を聞かない上司との課題を乗り越えることは難しいですが、対人支援の専門家の指導により、問題解決のスキルを向上させ、健康状態を良好に保つことは可能です。Intellectでは、ICF認定のコーチが、中間管理職の課題(業績評価、権限の委譲、チームメンバーへのコーチングなど)を克服する支援を行っています。Intellectのサービス詳細についてはこちらを参照ください。