【難題】メンタル不調を診断され会社の反応が心配。どうすれば?

2022年は新型コロナウイルス感染拡大により、不安やうつ、燃え尽き症候群などのメンタルヘルスの問題が増加しました。

在宅勤務で仕事とプライベートの境界線が曖昧になり、またハイブリッドワークへの移行が進む中、精神的に弱っている人が増えています。押し寄せる要求の波に耐えられなくなっているのです。

例えばあなたがメンタルヘルスの不調を診断されたのなら、会社に伝えるかどうか、悩んでいるかもしれません。

過去に比べて社会の意識は高まっているものの、メンタルヘルスに対する偏見は根強く残っています。つまりそれは、社会の一部である私たち一人ひとりにも、偏見が残っているかもしれないということです。

メンタルヘルス不調に関するスティグマ(偏見)

セルフスティグマ(自分に対する偏見)とは、メンタルヘルス不調の人が自身の状態に対して抱く、羞恥心を含むネガティブな態度や考え方のことです。

例えば、自分自身を「弱い」人間だと思い、いまの状態を恥ずかしく思うかもしれません。

社会的スティグマとは、あなたの状態をもって、人があなた自身やあなたの能力を差別したり、価値を低く見なすことです。

職場で、あなたを「価値を生み出せない」存在と判断したり、メンタル不調を伝えた時に「仕事をサボるための言い訳だ」と決めつけたりするような状況に見られます。

このようなスティグマが原因で、直属の上司や会社へ診断の結果を共有することをためらうことも無理はありません。ですが、共有しないこともまた、ネガティブな結果を招く可能性をはらんでいます。

例えば、メンタル不調にもかかわらず何もせずに仕事を続けた場合、完全に精神がまいってしまい、仕事の質が落ちたり、チームに悪影響をもたらしてしまう可能性があります。個人的なレベルでは、治療や回復のために休みを取る必要が生じるかもしれません。すでに精神へ支障をきたしてしまっているので、予防よりも回復は遥かに大変になります。

まずは自分をサポートする

上司や勤務先に状況を伝える準備ができているか決める前に、まずはセルフケアを行なって状態をととのえましょう。

それでは、代表的な方法をご紹介します:

自分の考えを疑う

羞恥心を掻き立てるセルフスティグマと付き合うのは、とても疲れます。自分自身に対するネガティブ思考(「私は弱い人間に違いない」など)をそのまま受け入れるのではなく、一度立ち止まって、疑ってみましょう。

以下のような質問が役立ちます:

感情をコントロールする

感情に対処するこれらの手法を活用したら、勤務先に診断を伝える心の準備ができているかどうか、決める段階に入ります。

注意:準備ができていないなら、無理に決める必要はありません。いまの時点では得るよりも失うものが多いと感じているか、決断するためにもう少し時間が必要と感じているのでしょう。そんなときは、焦らず、無理しないことです。

勤め先に伝える方法

決心がついたなら、以下の手順を参考にしてください。

準備する

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恐れにキャリアを支配させない

メンタルヘルスの問題は、特に偏見やキャリアへの脅威となる可能性により、解決の難しい重荷のように感じるかもしれません。

隠すことが最適で、自分を守る方法だと思うかもしれません。しかし、もしかしたら、メンタル不調がキャリアにもたらすネガティブな結果を恐れているからそう思っているかもしれないのです。

もちろん、最終的に選ぶのはあなたです。この記事を読みながら、恐れるだけでなく、可能性についても考えてみてください。

【難題】不安は仕事とキャリアにどう影響する? 臨床心理士が答えます

筆者の私は臨床心理士として、シンガポールのキャリア志向の人々と接していると、彼らが持つ不安の症状がキャリアアップにどのように影響するのか、という質問をよくいただきます。

この質問は特にパンデミックの間に増加し、不安やストレス、悩みについて専門家の助けを求める人たちが増えました。

不安な思考が頭をよぎると、すべてのことが難しく感じます。ちょっとしたありきたりな仕事でさえ、何週間も先延ばしてしまうと、強敵のモンスターのように感じられるのです。不安感は私たちの生活の様々な面に悪影響をもたらします。多くの場合、仕事やキャリアもその一部です。

パンデミック当初、在宅勤務で同僚と以前のように交流できないことに不安を感じるクライアントがいました。この悩みは彼の生産性や自信にも影響し、以前は楽にできていた、プロジェクトの協力を依頼するメールを送ることさえ、とてつもないハードルのように感じるほどでした。

診断名がつかないような不安の初期症状でも、私たちの日常に影響を与えます。もともと悩みがちな人は、夢(キャリアでも、人生の他の面でも)を追うことを恐れるあまり、踏み出すことさえできないのです。

(もし精神疾患と診断された場合はどうすればいいのか。それについてはこちらの記事で取り上げています:「【難題】メンタル不調を診断され会社の反応が心配。どうすれば?」)

確かに、「悩める」アーティストが感情を傑作に注ぎ込むといった、メンタルの問題がクリエイティブな情熱につながる話を聞くことがあります。しかし実際には、不安の症状に悩まされているとき、多くの人は控えめになり、恐れが増え、リスクを回避し、他人から評価を受けることを避けようとします。

不安と仕事・キャリアの関係

ここで、会社で新しいポジションについた同僚を想像してみましょう。新卒の社会人かもしれませんし、新しくマネージャーに就任したのかもしれません。

私生活において、以下のような不安の症状を抱えています:

この新しい同僚が、上記の症状を抱えながら、それ自体ストレスのかかる変化でもある、新しい仕事に就いたと想像してみてください。他人には見えないかもしれませんが、不安の症状は自信を喪失させ、新しい挑戦は楽しみではなく悩みのタネになり、新しい同僚との出会いや関係性の構築を避けるようになるのです。

不安な思考や感情、そしてその影響は人によって違って見えるかもしれません。しかし、このように不安の症状が、仕事の成果にダイレクトに影響するケースもあります。

注意すべき影響は、目に見えるものと見えないもの、いくつかあります。

見える(ことが多い)影響

欠勤: 不安は免疫システムに影響し、インフルエンザや腰の痛み、睡眠の質の低下など、病気や身体の不調をきたします。

プレゼンティーイズム:出勤しても心身の問題で生産性が上がらない状態のことを指します。多くの人は、特に在宅勤務中、体調が悪くても休みたくないか、休めないと思っています。気分が優れなくても働き続けてしまい、このような事態に陥ります。

生産性が低い・締切を守れない:仕事を後回ししたり、締切が守れなかったりするのは、不安症を持つ方によく見られます。急に身動きがとれないように感じ、小さなタスクでも始められない、始めたくないと思ってしまうのです。

多くの場合、不安に駆られた思考があると、完璧なプレゼンテーションをしなければならない、完璧なレポートを書かなければならない、という完璧主義に陥りがちです。この考えが大きくなりすぎると、失敗する可能性があるなら取り掛からないでおこうとするのです(ここでいう失敗はただ「完璧」でないけれども、良い仕事です)。

緊張した関係:不安感は自信喪失に直結し、目を合わせたり、チームランチやちょっとした会話といった社交的な状況を避けるようになります。

これらの問題は相互に影響し合います。不安は思考や意思決定、そして全体的なパフォーマンスをも変化させるのです。

例えば、仕事の質が下がっても(生産性の低下)できる限り出勤する(プレゼンティーイズム)ことで、かえって悩みが増え、タスクがさらに困難に思えてきます。

結果、病欠(欠勤)となり、タスクの完了が遅れ(締切を守れない)、会社で上手くやっている同僚のことを快く思えなくなってしまいます(緊張した)。

これは見える影響がどう関係しているかの一例ですが、人によって違って見えます。

見えない(ことが多い)影響

人との比較と思い込み:不安を感じているとき、多くの人は比較の罠に陥ります。自分よりも業績が良い同僚を、脅威と見なすような状態です。自分のパフォーマンスとは関係ないかもしれないのに、急に同僚の昇進を自分の能力が低いことと関連づけてしまったりします。

自分自身と他人を比較することや、外的状況を必要以上にネガティブに捉えてしまうことは、当然のことながら、それはあなたのメンタルヘルスやウェルビーイングに悪影響を与えます。

拡大解釈:不安に伴い現れるもう一つの思考パターンに、日々の問題を拡大解釈し、ポジティブな面を無視するパターンがあります。

仕事でプレゼンテーションをしたり、スピーチすることへの不安は、クライアントと取り組むことの多い問題です。例えば、あるとき私のクライアントは、セッションの前日に経営層に向けて重要なプレゼンテーションをしました。その様子を私に伝えるとき、彼女は冒頭にいくつかの言葉でまごついたけれど、すぐに気を取り直しうまくプレゼンテーションができたと説明しました。彼女の直属の上司は彼女をほめさえしました。彼女のよい仕事ぶりを示す好意的なフィードバックにも関わらず、私のクライアントは拡大解釈の罠にハマりました。冒頭のミスに動揺し、プロジェクトすべてを台無しにしたと感じていたのです。

これは、達成したことを過小評価する典型的な例です。もしクライアントが不安な思考や感情に悩んでいなければ、彼女の些細な間違いにほとんどの人は気づきもしなかったであろうと現実的に考えることができたはずです。

モチベーションの低下:不安の症状のもうひとつの見えにくい影響は、進行中のプロジェクトへの献身的な姿勢や新しい仕事を始めるモチベーションの欠如です。もちろん、常に100%のやる気で仕事ができる人はいませんが、不安の影響は、目標に到達するための1%さえ残してくれないことがあります。

逆に仕事とキャリアは不安へ影響するのか

クライアントの多くは、仕事やキャリアが不安にどのように影響しているのか、と逆の質問をすると驚きます。多くの人は「不安」→「仕事」への影響の一方通行だと思っていますが、必ずしもそうではないのです!

職場文化や仕事は、これまで見てきた不安の落とし穴や思考の罠を、和らげもすれば、激しくもします。

不安の感情があるからと言って、その原因が仕事やキャリアによるものと言いたいわけではありません。一般的に、仕事はメンタルヘルスの悩みを改善したりすれば、悪化させたりもします。状況や受けられるサポートによるので、一概には言えないのです。

ただ、メンタルヘルスの問題とキャリアアップの双方向の関係は、悪循環になることもあります。

例えば、現在の仕事に行き詰まったように感じ、キャリアアップの明確な道筋や、短期、長期の目標を持たない人は、将来への不安や悩みを感じはじめるでしょう。彼らは同僚や友人、知り合いが功績や昇進をLinkedInやFacebookに投稿しているのに気づき、人との比較や思い込みに陥ってしまいます。

「この仕事は私では力不足だ。もし私がもっと賢かったら、仕事が早ければ、もっと上のポジションにいるのに。みんな私が能力不足だと思っているに違いない」

時間が経つに連れ、これらの思考パターンは自尊心を低下させ、緊張した関係や生産性の低さにつながり、昇進や新しい役割の候補にあがる機会を奪います。

この状況に長く陥れば陥るほど、メンタルヘルスは悪化します。メンタルヘルスに悩めば悩むほど、リスクを取って昇進や新しい役割に名乗り出ることが難しくなります。

これらの関係は常に悪循環に陥るわけではありません。たとえ悪循環に陥ったとしても、仕事とキャリアップが不安の症状に与える影響はさまざまです。

同じように、優れた職場環境と健全なメンタルヘルスを保つケアは、相互によい影響を与え、好循環となるのです!

見える(ことが多い)影響

高い要求:人員の足りないチームで働いたことのある人は誰でも、(一時的でも)仕事量が大きくなることがどれほどストレスになるか知っているでしょう。長時間労働やタイトな締切、終わっていないタスクやセルフケアの時間の欠如により、不安やうつ、その他のメンタルヘルスの課題が大きくなったクライアントが、私のところに多くやってきます。

対人関係:同僚や経営層からひどい扱いを受けたり、職場でいじめられることが、メンタルヘルスに悪影響を及ぼし、不安思考や感情を強くさせることは、至極当然です。

見えない(ことが多い)影響

承認と公平性の欠如:給与が低かったり、認めてもらえなかったり、貢献や努力が報われない状態は、悩みや不安を長期的に引き起こし、大きくします。表彰の選考過程が不公平だったり、報酬のない超過労働を期待されたり、公式、非公式に関わらず職場での称賛がなかったりする場合は、悩みや不安を増大させます。

不確実性:どんな状況でも、不確実性は、効率的にも効果的にも将来に備えられないことを意味し、不安を助長することがあります。一般的な仕事の不確実性(解雇されるだろうか?)、不確実な組織変更(異動があったら、どんな仕事になるだろうか?)、求められることが不明瞭(この仕事や会社でどう成功できるだろうか?)といったものがあります。

悪い循環に陥らないように

まとめると、次の例のような悪循環に陥ることがあります。

仕事が山のようにあり(高い要求)、時間がなく、上司は今日中にプロジェクトを完了するよう圧力をかけてくる(対人関係)ことを想像してみてください。どこからともなく、同僚があなたのデスクそばに現れ、ちょっとした仕事を頼んできます。

簡単にできる5分程度の仕事です。上司から飛んできた仕事と圧力がなければ、喜んで助け、同僚との関係性を強化できたでしょう。

しかしこの状況が悩みにネガティブに影響し、不安な思考を引き起こします。

同僚を助ける代わりに、誰か他の人に頼むように伝えます。今後同僚は、あなたのことをあまり高く評価しなくなり、将来面白い機会があってもあなたに声をかけないかもしれません(緊張した関係とキャリアアップへの機会の喪失)。

もう一度言いますが、これらの関係は常に悪循環や負のスパイラルに陥るわけではありません。優れた職場環境と健全なメンタルヘルスのケアは、互いによい影響を与え、好循環となります。

あるポジションへ応募する資格が十分にあるのに、昇進に名乗り出ることにとても不安を感じているクライアントがいました。数週間のいくつものセッションののち、彼は十分に自信をつけ、手をあげ……、そして昇進! その瞬間から、私の助けを必要とする機会はぐっと減りました。彼の最近の様子を聞いたときには、重荷を下ろしたようだと話します。この昇進は、自信を持ち、スキルを信じるために必要としていた証拠を彼に与え、不安の症状を大きく減らすことができました。

この記事だけでは、不安の感情や悩みの克服について伝えきれませんが、メンタルヘルスに気を配り、幸せで生産性のある従業員でいることは、自分たちの責任だけではありません。企業が、私たちをサポートし困難に打ち勝つ手助けをする健全な職場文化を築くことも、また重要なのです。

Intellectが教えるセルフケアの方法【従業員も社長も参考になります】

インターネットミームやパロディ画像によって、セルフケアは小売療法、贅沢な食事、スパの日などと同義語になりました。今では、力を抜いてリラックスし、日々のストレスを取り除く手段は「セルフケア」と定義されています。

しかし、セルフケアは思いついた時にゆっくりすることだけでは完結しません。メンタル面での健康を保つために、意識的かつ定期的に実践する健康的な行動を習慣化することが必要なのです。

今日の職場環境において、セルフケアは、従業員の満足度と仕事のパフォーマンスを維持する上で、最も過小評価され、見落とされている要因の一つです。セルフケアへの理解が欠如しているため、離職、燃え尽き症候群、不安感、さらにはうつ病を引き起こしていると考えられます。

マーサーの調査によると、シンガポールでは、85%の従業員が2022年に燃え尽き症候群のリスクを感じていることを認めています。

また、リモートワークやハイブリッドワークに新たに適応する必要があり、働く人のメンタルを取り巻く状況はさらに悪化し、先行きが不透明ながらも、多くの従業員が仕事を辞めざるを得ない状況に追い込まれています。

この記事では、心の健康を育むためにできることを仕事でこなしている役割別に紹介します。

従業員のセルフケア

1.1. よく食べ、よく眠り、よく動く 

体力づくりと同じように、心の健康を保つには、自律性と健康的な習慣が必要です。

散歩、ジョギング、ハイキングなどの運動は、映画鑑賞、アロマテラピー、ピクニックなどのリラックスできるアクティビティと並んで、Intellectがまとめたメンタル向上に効く60のリストに含まれています。

また、「質の高い睡眠」も上位に挙げられます。パンデミックによって世界の働き方が大きく変化し、多くの人の生活リズムを狂わせました。そのため、太陽の光を十分に浴び、体を動かし、仕事と休息の境界線をはっきりさせることは、意図的に行う必要があります。

睡眠研究者で心理学者のステイン・マッサー博士は、夜更かしや寝坊の誘惑があっても、一定の睡眠スケジュールを守ることを勧めています。また、1日の中で体を動かすことを優先させること、例えば運動したり、食事を注文せずに歩いて取りに行ったりすること、家では意識的に仕事場と休憩所を分けることを勧めています。

Intellectが行ったマッサー博士とのインタビューでは、さらに役立つヒントを紹介しています。

1.2. 不安の症状を早期に発見する

休息不足は、リモートワークがもたらす無数の弊害のひとつに過ぎません。あなたも、明日上司とのウェブ会議があると考えただけで、お腹が痛くなった経験はあるのではないでしょうか?

このような疲労感、心配事、燃え尽き症候群は社会不安の一種ですが、対処することができます。

通話中、必要なときだけカメラをオンにしたり、自分の映像ではなく相手の映像にフォーカスするような設定にしたりすることで、自分の外見を気にしなくていいようにできます。また、普段のオフィスと同じような格好をしてもいいでしょう。身だしなみを整えると、気分も良くなります。

また、定期的に休憩を取ることも忘れないでください。もし、会議でいつも他の人が話してばかりで、自分のアイデアが聞き入れられないと感じたら、上司に相談してください。

一言で言えば、「自分に優しく」です。

Zoom疲れは、不安感の犠牲者になってしまう要因の一つです。いつも先延ばしにしていたり、過労気味になっていたり、すぐに自分を貶めたり、小さな問題に感情的に反応してしまう人は、仕事を原因とする不安を感じている可能性があります。

このような悪循環に陥る前に、専門家に相談しましょう。相談は恥ずかしいことではなく、勇気ある行動です。あなたの心の健康が損なわれては、誰も幸せになることはできないのです。

1.3. 外部にサポートネットワークを作っておく

メンタルヘルスに関するサポートシステムを考えるとき、友人や家族、ラインマネージャーやメンターなど、最も身近な相談相手が思い浮かぶと思います。しかし、多くのアジア人が意識していないのが、エグゼクティブ・コーチングです。

Intellectのエグゼクティブ・コーチであるRobyn Camは、個人的なメンターがいるからといって、エグゼクティブ・コーチングが不要になるわけではないと指摘します。エグゼクティブ・コーチングは、過去を扱うセラピーとは異なり、未来を扱うもので、特にキャリアに悩んでいないときでも受けることができます。

Robynのインタビューでは、コーチングがどのようにあなたの心の健康とキャリア開発の両方を積極的に支援するかをご紹介しています。

もう1つ、見落とされがちなのが、自己啓発本です。調査によると、問題に焦点を当てた自己啓発本を読むことは、特定の心理的な問題を抱える人に役立つ傾向があることが明らかになっています。自己啓発本の人気が高まったのは、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きいかもしれません。しかし、ニューノーマルの世界では、これからもずっと人気であり続けるでしょう。

1.4. 困難な移行に備える

コロナ前の私たちの多くは、在宅勤務に魅力を感じていましたが、コロナ禍も2年目に入ると、デメリットを実感したのではないでしょうか。例えば、座りっぱなしになる、昼休みをきちんととらない、勤務時間が長くなるなど。

もし、あなたの会社がリモートワークへの移行を本格的に考えているなら、長い目で見れば、これらの習慣管理を始めるのに、今ほど適した時期はないでしょう。

オフィスへの復帰も簡単ではありません。世の中が通常営業の再開に向けて動き出している今、出社して働くことに不安を感じるかもしれません。

でも、それはあなただけではありません。大きな変化には不安がつきものですが、その根本的な原因を理解することで、健全な対処法を身につけることができます。早めに出社して仕事に慣れるようにしたり、楽しみなランチを計画したりすることで、これからの変化を前向きにとらえることができます。

これらのヒントは、心の健康を優先させながら、適応するために大いに役立ちます。

管理職のためのセルフケア 

2.1. まずは自分のセルフケアから

他人のニーズを管理するリーダーですが、まずは自分自身のケアができていないといけません。飛行機が離陸する前の安全説明で必ず言われるように、他人に酸素マスクを付ける前に、自分のをつけましょう。

仕事では、境界線を敷くことで、自分の時間とエネルギーを確保することができます。また、自分では変えられないことを心配するよりも、自分の立場でコントロールできる要素に集中することができます。

特に人事担当者は、何十人、何百人のスタッフのケアを考える前に、自分自身のセルフケアの習慣を身につけることを考えるべきです。

また、職務を全うするために板挟みにあい、対面での交流を奪われがちな中間管理職も、自分自身のセルフケアプランを練っておくことが効果的です。

2.2. 従業員のパフォーマンスとウェルビーイングのバランス 

部下の業績不振は、マネージャーにとっては避けられない問題です。

新型コロナウイルスが、社員のメンタルヘルスに良い影響を与えることは皆無だったでしょう。しかし、メンタルヘルスについては、コロナが流行るずっと前から、職場で語ることはタブー視され、静かな疫病として蔓延していました。メンタル不調を訴える社員に対処する際、管理職はどのように線引きすればよいのでしょうか。

Intelellectで人事部長を務めるShang Trinidadは、問題をメンバーの性格のせいにして非難するのではなく、仕事の成果というレンズを通して検討し、具体例を挙げながら、一緒に改善策をアクションプランに落とし込むことを勧めています。

サポートと働き方の調整を行っても事態が改善しない場合、業務改善プランを考えることが次のステップとなります。

リーダーのためのセルフケア

3.1. 持続可能なペースで進む

人は、女優兼プロデューサーであり、パティスリー(洋菓子店)のオーナーでもあるJeanette Awを見ると、彼女は多くの仕事をこなしながら、どうして自分の時間が持てるのだろうと不思議に思うかもしれません。

Intellect CEOのTheodoric Chewと臨床心理士のLinda Rinnが主催したウェビナーで、Jeanetteは、ビジネスオーナーは、他の人がどれだけうまくいっているかを気にするのではなく、自分のペースで歩む必要があると語りました。

また、Theodoricは、助けを求めることの重要性を強調し、多くのスタートアップ企業の起業家が、手を差し伸べると惜しみなく助けやアドバイスを与えてくれたと話します。企業のリーダーとして、ソーシャルメディア上のネガティブなコメントなどがあったら話半分に聴くことも、メンタルを守る上で有効な手段の一つです。

3.2. さらに上を目指すために休息をとる

リーダーの立場になると、仕事と生活の境界線はかつてないほど曖昧になります。組織全体の重荷を背負っているため、自分の時間を確保するのは時として不可能に思えるかもしれません。

しかし、リーダーが自分自身のケアを怠ると、会社の成長を妨げることになりかねません。たとえ経営者であっても、運動や休息などのセルフケアは計画的に行い、自分を見つめ直し、精神的な回復力を高める習慣を身につけましょう。

こちらの記事では、アジアで活躍する2人の起業家が、それぞれの組織でどのようにセルフケアの模範を示したかを紹介しています。ぜひ、参考にしてみてください。

組織におけるセルフケア

従業員のメンタルヘルスをサポートするために企業が果たす役割は、決して小さくありません。しかし、どのようにすれば、より良い職場環境を作るためのロードマップを描くことができるのでしょうか。

4.1. 心理的安全性の担保

従業員が批判や評価が下がることを恐れて懸念を口に出せないと、組織全体として士気や生産性が低下します。

職場の心理的安全性は、従業員一人ひとりが大切にされているというメッセージを発信し、従業員の信頼を維持し、従業員が活躍できる環境を整えることから始まります。

そのためには、社員が職場で直面している問題について議論できるような、社外向けのフォーラムを設けるとよいでしょう。そうすることで、リーダーには変革の提案の裏付けとなるデータが得られ、会社には従来のプロセスを見直す機会が与えられます。

部署内での信頼関係を構築するために、管理職は協調的な話し合いを促すことで、意見の対立を積極的に受け入れることができます。IntellectのリーダーシップコーチであるThais Pietroは、こちらの記事で心理的安全性を育む方法を紹介しています。

4.2. メンタルヘルスの取り組みを模範を示してリードする

Klookのピープル&カルチャー担当副社長であるCary Shekは、優秀な人材が会社を辞める原因をまず理解することが重要であると強調します。そのデータを用いて、企業は組織内のセルフケアをそれぞれのメンバーに合った形で始めることができると言います。

このような取り組みを効果的に進めるためには、リーダー自身がそれを体現していなければなりません。例えば、管理職が時間外に会議を開き、週末に返事をするようでは、会社のセルフケアの取り組みとは矛盾しているように見えます。

経営層などのリーダーが「率先垂範」することが、企業文化を社内に浸透させる最も効果的な方法なのです。トップが真の意味でセルフケア文化を構築する方法については、こちらをご覧ください。

4.3. 適切な人材を昇進させる

管理職の昇進は難しいものです。

企業が犯す最大の過ちは、権限委譲などの重要なリーダーシップスキルを持たないまま、優秀なプレイヤーを昇進させてしまうことです。部下にうまく仕事を任せられない人がマネージャーになると、それが原因で自分もチームも燃え尽きてしまう危険性があります。

企業は、Googleを見習い、貢献が得意で優れた専門性を持つ社員と、チームを率いてやる気を起こさせることに強い関心を持つ社員とを区別し始めるとよいでしょう。

また、管理職候補の採用プロセスにおいて、チームメンバーを巻き込むことも重要です。意思決定への関与の機会を与えることで、新リーダー就任後の人材流出リスクを低減することができます。

こちらの記事では、管理職を正しく支援し、活躍させるための強力なヒントを紹介しています。

4.4. 従業員を成功に導く

コーチングも、企業が従業員のエンゲージメントを高めるために検討すべき方法の1つです。

エンゲージメントの低下は、従業員が仕事にやりがいを感じられないとき、あるいは意見を尊重されなかったり、過小評価されたと感じるときに起こります。コーチングは、必要なツールや戦略を身につけたり、目的を見出す手助けをすることで、管理職を含む従業員の心理的な課題解決を支援します。

コーチングとは何か、そして、それがどのようにあなたの企業の成功に寄与するかについては、こちらの記事をご覧ください。

4.5. 時代遅れの企業ポリシーを見直す

最後に、休暇取得の方法や労働時間などの企業ポリシーが、今の世界標準に追いついているかどうかを検証する必要があります。

新型コロナによって生活のストレス要因が変化するにつれ、多くの企業は休日や労働時間について柔軟に対応するようになっています。また、福利厚生の面でも、心身の健康をより重視するよう、多くの企業が改変しています。

詳しくは、東南アジアの大手企業が方針をアップデートするために行ったことを、変更に伴う考慮事項とともに紹介したこちらの記事をご覧ください。

変化は日々の積み重ねから

あなたが組織の中でどのような役割を担っているかにかかわらず、自分自身のニーズは自分が一番よく知っているはずです。

それを尊重するには時間と努力を要します。しかし、自分自身や組織に少しずつ、しかし確実に変化が起きていることに気づけば、それは報われるでしょう。