世界中のあらゆる国で職場が再開しつつあり、「再入社(re-entry)」とも呼ばれているように、人々はオフィスに戻り始めています。
パンデミック前に戻るかのように見える一方、大多数の人々はオフィスに戻ることに不安で、大きなストレスを抱えています。
その不安は、同僚と自然に会話を始められないと感じることや、公共交通機関を使うことへの安全上の懸念かもしれません。
では企業はオフィス再開において従業員をどのようにサポートでき、どのようにメンタルヘルスに配慮できるのでしょうか?
最もよい方法のひとつに、思っていることやスムーズな職場再開のために必要なことを気兼ねなく表に出せるような、心理的安全性と職場への信頼を築くことがあります。
心理的安全性の高い環境とは?
ハーバードビジネススクール教授のエイミー・C・エドモンドソンによると、心理的安全性とは「考えや質問、懸念や間違いを発言しても、罰せられたり恥ずかしい思いをしないと信じていること」とされています。
チームの中では、メンバーが発言者に対して拒絶したり、恥ずかしい思いをさせたり、罰したりしないという共通の信念のことを意味します。
このような環境は当たり前に存在していなければならないと考えるかもしれません。しかし、どんなに合理的な状況でも、人々は黙っていることがあるのです。
例えば、看護師が患者の健康に影響を及ぼす可能性があるプロセスに気付いていても、脅迫されたり罰を受けることを知っている場合、何も言わない可能性が高くなります。
もちろん、その場合は最悪の結果になります。
ハイブリッドワークやリモートワークが当たり前となるなかで、こういった状況はより増えています。
職場に戻る調整でストレスを感じていたり、同僚の憂うつに気づいたりしたときには、声を上げられることがとても大切です。それでは、どうすれば心理的安全性のある職場環境をつくることができるのでしょうか?
なぜ重要なのか?
ビジネスにおいて、心理的安全性を定量化することは難しく感じるかもしれません。
この記事の後半では、心理的安全性の計り方と進捗を確認する方法についてご紹介します。
しかし、声を上げるための安全性が感じられないとき、問題は表面化せず、イノベーションは停滞し、連携力は弱まるでしょう。
人々は職場に来ることを恐れ、言われたこと、許可されたことしかやらないことになるかもしれません。これは彼らのキャリアアップにも影響します。
長期的には、被害を受けるのは会社です。人々の強みを生かすことができず、失敗に対処する能力を備えられず、不安な時期に機動性を保つ革新性を生み出せないのです。
職場の心理的安全性を築く方法
GoogleのPeople Operationsチームにより実施された興味深い研究によると、成功するチームには5つの要素があるそうです。
その中でも、心理的安全性が圧倒的なトップです。実際のところ、研究によると、心理的安全性はその他の4つの要素(信頼性、構造と明確性、意義、影響)を支えるものなのです。
心理的安全性がないと、チームメンバーはミスを認めず、連携しなくなり、新しい役割を引き受けたくなくなる傾向にあることがわかりました。
職場での心理的安全性を高める6つのヒントをご紹介します。
1. 共感する
同じ出来事にも人それぞれ違った受け止め方をすることを知っておいてください。
例えば、同僚と対面することを喜ぶ人もいれば、同僚に好かれないかもしれない、気まずい会話をするかもしれないと、不安に思う人もいます。週に3回オフィスに戻ることに対して気分良く思わない人もいます。
その理由を決めつけるのではなく、それぞれの観点を理解するよう努めましょう。
2. 自分の反応を確認する
他の人があなたに提案やフィードバックをしにきたとき、あなたはどう反応しますか?
直感的に責めたり非難するようなら、相手はあなたへ提案やフィードバックをすることに神経質になっている可能性が高いです。
もし感謝の気持ちで受け止められ、「大切な問題を提起してくれてありがとう。これで時間を節約することができます」と言えるようなら、周りの人は今後も快く意見を共有してくれるでしょう。
3. 実行の問題ではなく、学習の問題にあてはめる
仕事を学習の問題にあてはめることで、課題解決に必要な、学ぶことのできるスキルや能力、知識があるからこそ問題が生じている、と考えることができます。
実行の問題だとすると、問題を解決できない人、もしくは問題を作り出した人の責任となり、より個人的な問題になってしまいます。
4. 自分も間違うことがあることを認める
これは、リーダーとしての主体性に関わります。間違ってしまったかもしれないときや、違った観点から考えられていなかったときに、進んでそれを認めることは、あなたもただ一人の人間であるというメッセージになります。
間違いは学習や成長の本質的な要素で、間違いから教訓を学び、よりよく対応できるようになるのです。
5. 質問することで好奇心を示す
質問をすることは、常にすべてを知っているわけではないことを意味します。
人々は、質問する価値がないと思って、本当は大事な質問をしないことがあります。
しかし、小さな質問や重要でない質問などないということを示すことができれば、周りの人も後に続くようになるでしょう。
6. 全員の発言を促すフレームワークを活用する
「誰か意見はありますか?」と言うのではなく、順々にめぐり、何かしらの価値を提供できる意見や、アイデア、フィードバックを全員が発言できるようにするのです。
こうすることで、意見を言うことが当たり前になり、発言に怖気づかなくなります。
心理的安全性のある環境を築く過程は時間を要します。
しかし、あなたがチームメンバーをサポートするために必要なことを理解している場合、不可能ではありません。
実現できれば、次のような可能性を考え始めることができます。
チームメンバーがベストな状態であり続けるために何ができるだろうか?
新しいアイデアを持ち込み、イノベーションに対して大胆になり、様々な観点から考えることを促すにはどうすればいいだろうか?
今の仕事に誇りを持ち続けるために何ができるだろうか?
結局、チームの勝利は、組織全体の勝利を意味するのです。