Z世代の一部が社会人として働き始めて数年が経ち、彼らは企業に多くの変化をもたらしています。Z世代はデジタルネイティブであることや、コロナ禍で仕事やキャリアに対する価値観が大きく変化している中で働き始めたことから、これまでの世代と比べて企業に求めることが異なります。
TalentLMSとBambooHRによる研究「職場におけるZ世代」では、調査した米国の1205名のZ世代のうち、82%がメンタルヘルスのための休日を重要と考えており、半数がメンタルヘルスに関する研修を希望していると報告されています。
では、入社してきたZ世代は企業に何を求めているのでしょうか。どのように彼らのニーズに応えれば良いのでしょうか。Intellect社のZ世代の声とともにご紹介します。
理想的でありながら現実的
デロイトの調査「Z世代はミレニアル+ではない」では、東南アジアにおける1,000人以上の回答者のうち、56%のZ世代が企業ブランドの人気よりも企業のミッションやポジティブな社会的インパクトを重要視することがわかりました。
「アイデンティティの一部として、個人の価値観や人生の目標に沿った仕事に就くことが理想です。そうすることで、目的意識や達成感を得ることができます」と、インドネシア在住の23歳のマーケティングアソシエイト、Sittiは話します。
だからといって、Z世代が高い理想に溺れているわけではありません。彼らの64%は、刺激的な仕事よりも仕事の安定や明確なキャリアの見通しを選ぶことがわかっています。「初めのうちから価値観や目標を定めている人は少数です。私たちの多くは、仕事を実利的に捉えるところから始めるでしょう」とSittiは説明します。
フィリピンで開発研究を学ぶ20歳のFelicia同様の考えを持っています。彼女の価値観を中心にした仕事である必要は必ずしもありませんが、他の手段で目的を達成するためには「お金と時間の自由」をもたらす仕事でなければならないと語っています。
厚生労働省の調査によると、20代前半の転職率が他の世代よりも高く、20代全体の転職率は約3割程度で推移しています。転職の理由には、給与が低いことや、休日が少なくワークライフバランスが取れないことなどが挙げられています。
他の世代と比較すると、Z世代は給料に重きを置かない傾向があります。それでも、持続可能性や社会的公平性など、彼らの価値観に反する仕事には就かないでしょう。企業に今求められているのは、価値観の見直しです。
柔軟性は必要不可欠なもの
Z世代は、世界的なパンデミックの中で就職し、厳しい情勢の中でキャリアを歩み始めました。
デロイトの調査「新しい労働概況におけるZ世代とミレニアル世代のメンタルヘルス」では、46%のZ世代が労働環境の厳しさと要求に対して燃え尽きたと感じると回答しました。半数は「常に、もしくはほとんどの時間、ストレスや不安を抱えている」と述べています。その感情をさらに悪化させている要因は、「経済的な懸念(47%)」、「労働量(34%)」、「ワークライフバランスの悪さ(32%)」、そして「メンタルヘルスへの懸念(39%)」が挙げられています。
「過剰な仕事量を求め、従業員の給料を搾取するような会社や上司のためには働きたくありません」とFeliciaは説明し、仕事を断る理由として柔軟性やワークライフバランスの欠如をあげました。「それらがない環境では、クリエイティブな取り組みや対話ができる余地がありません。私はそのような環境で心地よく働けるとは思えません。」
フィリピン在住の24歳のシニアアソシエイトNelly も同意しています。「Z世代の多くは、定時ちょうどに仕事を終えたいと思っているのではないでしょうか。私は仕事以外の生活を非常に大切にしています。」
今、TikTokやその他のSNSでは「静かな退職」ムーブメントが広がっており、与えられた仕事以上のことはせず、仕事以外の生活に重きを置く従業員の姿勢が表れています。
多くの労働者にとって、フレックスタイム制度やリモートワークはパンデミックが起きるまで馴染みのないものでしたが、Z世代は早い段階からこれらの働き方を経験しています。前例ができてしまった以上、もう後戻りはできません。働き方の柔軟性は、Z世代にとって単なる好ましい選択肢ではなく、必要不可欠な要素となったのです。
「在宅勤務の柔軟性、さらには他国で働くことを可能にするために、フレックス勤務は継続されるべきです」と、25歳のシンガポール在住グロースマーケティングアソシエイトのKripaは言います。
「自分の仕事で気に入っている点は、勤務時間がとても柔軟であることです。成果やタスクに基づいており、自分のスケジュールをコントロールできていると感じています」とNellyも語りました。
リモートでも、つながっていたい
リモートワークには多くのメリットがある一方で、運用は簡単ではありません。労働環境におけるZ世代に関する調査では、73%のZ世代が「たまに、もしくは常に孤独を感じている」と回答しています。また、44%はリモートワークが孤独感や疎外感を生み出していると述べており、従業員のウェルビーイング支援の重要性が高まっています。
従業員の燃え尽き症候群は雇用側に原因があるという認識から、各地で企業がメンタルヘルス休暇や社内でのセラピーセッションなどの福利厚生を提供し始めています。先端を走る企業は積極的にウェルビーイングに関して発言し、従業員のメンタルヘルスにまつわるイメージを日々変えています。上の世代にとってこれは慣れない傾向かもしれません。しかし、Z世代にとって、会社の福利厚生は自分たちのウェルビーイングと連携している必要があるのです。
Feliciaはこう話します。「仕事を休む理由は、身体の健康だけに限られるべきではありません。メンタル不調を抱えている人は、休暇を希望する際にそれ以上の説明をする必要はありません。心の健康は身体の健康と同様に扱うべきです。」
求職者の中には、従業員のメンタルヘルスへの配慮が不足している企業には入社しない人もいます。
「メンタルヘルスに関する福利厚生の重要性が理解されつつある今、そのような支援を提供しない企業からのオファーは断ると思います。メンタルヘルスを重視する環境は、仕事のパフォーマンスに良い影響を与えてくれます」とSittiは説明します。
しかし、メンタルヘルスケアは堅苦しいものである必要はありません。休暇や報酬は有効ですが、協力的な企業文化も重要な役割を果たします。
「ストレスが手に負えないと感じてマネージャーに相談したとき、彼は私の気持ちを理解するために質問をしたり、寄り添ってくれました」とSittiは話します。「具体的な解決策には至らなくても、ネガティブな感情を認めてもらえたように感じ、理解してもらえたようなことにほっとしました。」
Nellyも次のように話します。「同僚とのつながりがあれば、感情的にもメンタル的にもより良く働けると感じます。人と関わり、同僚との関係を築く機会が増えたことで、心の状態が改善しました。」
Z世代が企業に求めるもの
結論、Z世代は現実的であり、社会的関心や自身のメンタルヘルスに対する意識が高く、充実した人生を送りたいと考えている世代です。彼らは金銭的な報酬も求めていますが、自分の価値観を妥協するほどではありません。柔軟性と自由を重視しつつも、社会的なつながりを犠牲にすることはありません。彼らは意義のある目的のために働きたいと思っていますが、ハッスルカルチャーには反対し、メンタルヘルスを最優先に考えています。
仕事とプライベートは切っても切り離せない関係です。「仕事は仕事」と言える時代は終わったのです。この考え方が新しい社会の担い手を導くように、企業も変化を求められているのかもしれません。