「共依存」という関係について耳にしたことがある方も多いでしょう。「一緒にいてくれないなら生きていけない」「君がいないとダメなんだ」といったセリフは、映画やドラマでよく聞きますが、実際には共依存関係は健康的ではありません。共依存とは、相手に過度に依存し、自分の価値や感情を相手に重ねることで、自己を見失い、互いに依存し合う状態を指します。
共依存の反対は「独立」です。しかし、ただ独立しているだけでは健全な関係を築けません。お互いを支え合い、頼ることも重要です。ただし、依存が過度になると関係性が不健全になり、共依存になってしまいます。
一方で、相手と一緒にいることで、自分を犠牲にせずに安心感や精神的な支えを得られる関係を「相互依存」と呼びます。
親子関係や夫婦、恋愛関係を思い浮かべるかもしれませんが、職場でも「共依存」「独立」「相互依存」は関係します。
例えば、職場で上司を喜ばせることや必要とされることに過度に頼り、それがないと不安になる場合、上司や同僚に振り回されて業務に偏りが生じたり、お互いの成長を阻んだりすることがあります。これも職場における共依存の一例です。また、最近では「独立」が強く、会議以外で全く話したことがない職場なども珍しくありません。
だからこそ、職場における「相互依存」を考えるべきです。
相互依存の特徴
- 心の境界線を保ち、精神的に自立していること
- 相手との関係以外でも充実した時間を過ごし、自分自身の幸せにもつながること
- 相手を変えようとしないこと
- 非難せず、「私」または「私たち」として発言し、協力を示すこと
職場における相互依存の具体例
- チームメンバーが互いの強みと弱みを理解し合い、役割を補完しながらプロジェクトに取り組む。
- 上司が部下の能力や意見を尊重し、部下が上司の指示やフィードバックを真摯に受け止める。
- 問題が発生した際に、同僚が助言や支援を提供し合い、共に解決策を模索する。
- 他部門の要望やニーズに柔軟に対応し、相手の立場や目標を理解した上で協力する。
これらの具体例は、職場における相互依存がどのように機能するかを示しています。相互依存の関係が築かれることで、メンバーが支え合い、共通の目標に向かって協力することが可能になります。データによれば、離職理由の3割が人間関係に起因しています。良好な人間関係を築くことで、離職率が下がり、仕事のパフォーマンス向上にもつながります。
独立した個人がお互いを支え合い、尊重しながら関係を築くことは簡単ではありません。人間関係とは一時的なものではなく、継続的に育むものだからです。Intellect Japanでは、コーチングや専門カウンセリングを通じて、従業員の職場関係を良好にするお手伝いをしております。育った環境や職場での文化、個人の特性など、様々な要素が人間関係に影響を与えます。専門家によるコーチングやカウンセリングでは、自己分析を通して、自分のパターンや状況を把握し、コミュニケーションスキルや職場での心の境界線の引き方を改良することができます。
良好な人間関係を築き維持するために、ぜひ、Intellect Japanでのコーチングや専門カウンセリングを検討してみてください。
参考文献
労働政策研究・研修機構. (2017). 労働政策研究報告書 No.164. 取得元:https://www.jil.go.jp/institute/research/2017/164.html
PROFILE: 公認心理師 上村貴子
カリフォルニア州でマリッジ&ファミリーセラピーとアートセラピーの修士号を取得。米国で性暴力被害者支援センターや児童福祉機関で5年以上支援。日本帰国後、米軍関係者やサードカルチャーキッドを対象にトラウマやうつの治療経験を深める。現在、公認心理師として認知行動療法や弁証法行動療法を用い、Intellectで従業員メンタルヘルスを支援中。