多国籍従業員が所属するチームや、多様な文化背景を持つ人と接するビジネスシーンにおいて、相手の言動に違和感を感じたり、意図が上手く伝わらずに戸惑った経験はないでしょうか。
コミュニケーションのスタイルは話し手の文化、価値観、習慣、経験などによって大きく左右されます。そこで知っておきたいのが「ハイコンテクスト文化」と「ローコンテクスト文化」の概念です。これらは、文化人類学者であり異文化コミュニケーションの研究者であるエドワード・T・ホールによって提唱された概念で、情報や意見の伝え方や受け取り方の違いを説明しています。
本記事では、異文化コミュニケーションを理解するための基本となる、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化の特徴を解説します。(マネジメント層やチームリーダーが職場でコミュニケーションの質を高めるための具体的なヒントはこちらの後半の記事をご覧ください。)
ハイコンテクスト文化
ハイコンテクスト文化(高文脈文化)は、直接言葉で表現される内容よりも、言葉にされていない文脈や非言語的な要素から伝わる情報に重きを置くコミュニケーションを指します。コミュニケーションをとる上で、言葉そのものよりも、相手の表情、声のトーン、沈黙、相手との関係性などの前提となる文脈などから意味から意味を汲み取り、理解します。つまり、聞き手には「察する力」や「空気を読む力」が求められます。代表的なハイコンテクスト文化の国としては、日本、中国、フランス、アラブ圏があげられます。
職場におけるハイコンテクストなやり取り例
- 企画を提案された際:「大変そうですね。他の皆さんはどう感じるでしょうかね…」
- 量が多いタスクについて:「ちょっと重いですね、一人では大変そうです。」
- 休暇を相談する際:「最近色々あって、来週少しリフレッシュする時間をとりたいと思っているのですが、大丈夫でしょうか?」
ハイコンテクストコミュニケーションは誤解が生まれやすい

ハイコンテクストなコミュニケーションは、柔らかく調和を重視したスタイルであり、参加者の共通理解と調和が重視されるため、参加者間で一体感が生まれ、人間関係の構築と維持に効果的だと考えられます。また、柔らかい表現はネガティブな情報や反対意見を伝える際、聞き手が穏やかに受け止めやすいというメリットがあります。
ですが、曖昧な表現が多く、直接的な質疑応答が発生しないため、話し手の意図が正しく伝わらずに解釈の違いが発生しやすいのが難点です。例えば、休暇の相談をする際、「最近色々あって…」と上司に相談した場合、上司はその言葉やあなたの表情やトーンなどからあなたの心境を察して「大丈夫」と回答するかもしれません。
また、この「大丈夫」という返信もハイコンテクストな表現であり、「休んでも問題ない」という意味なのか、「望ましくないが仕方がない」という意味なのか、あなたは上司の表情や仕事の状況などの非言語的な情報から、「大丈夫」という言葉の意味を推測して受け止めるでしょう。ハイコンテクストなコミュニケーションの場合、このような解釈のずれが生じやすくなります。
ローコンテクスト文化
ローコンテクスト文化(低文脈文化)では、直接的な表現が好まれ、思考や感情を明確に言葉で伝えることを重視します。非言語コミュニケーションよりも、発言された言葉の意味と目的が重視されるため、話し手には「明確に伝える力」が求められます。このスタイルは論理的な意思決定がされやすいと考えられており、アメリカ、ドイツ、イギリス、デンマークが代表的なローコンテクスト文化の国としてあげられます。
職場におけるローコンテクストなやり取り例
- 企画を提案された際:「改善が必要です。〇〇さんとも確認してください。」
- 量が多いタスクについて:「一人だと来週までかかるので、どなたか一緒に手伝っていただけませんか?」
- 休暇を相談する際:「来週の金曜日に休暇を取ってもよろしいでしょうか?」
ローコンテクストコミュニケーションは冷たい?

ローコンテクストなコミュニケーションは、伝えたい内容を率直でわかりやすい表現で伝えるため、議論や意思決定の効率が上がります。誰に対しても一貫して、話し手の意図を伝えることで、誤解は生じにくいでしょう。しかし、話し手の言葉の選択力と伝える力に依存し、表現や状況よっては冷たさや距離を感じられることがあります。
例えば、あなたが提案した企画に対して「改善が必要です。〇〇さんとも確認してください。」と指摘された場合、どのように感じますか?話し手は業務上の改善のために前向きなアドバイスを伝えたつもりでも、聞き手によっては言葉がきつく、攻撃的だと捉えられることがあります。メールやチャットなど非対面のコミュニケーションでは特に、冷たい印象で受け止められる可能性があります。
多様性を組織の力に

異文化コミュニケーションの理解を高め、状況に応じて適切に使い分けることで、仕事のみならずプライベートでも円滑なコミュニケーションを実現し、良好な信頼関係の構築に役立ちます。さらに、文化の違いから生じる誤解などのトラブルを防ぎ、心理的安全性の高い職場環境づくりにも繋がるでしょう。後半の記事では、多様なバックグラウンドを持つチームをまとめるマネジメント層やリーダーに向けて、チームが相互理解を深め、コミュニケーションの質を高めるための実践的なヒントをご紹介します。
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