Googleで「心理的安全性」と検索すると、「アイデアや質問、心配事を声に出したり、失敗を犯しても、非難されることや罰せられることがないと思える状態」という結果が出ます。
対人関係においてリスクを取れると感じられれば、チームメンバーは批判を恐れずに、「このプロジェクトの目標は何か」などと適切に質問することができるでしょう。
ハーバード・ビジネス・スクールのAmy C. Edmondson教授は、TEDx Talkにて次のように説明しています。
「発言を控える度に、私たちは自分自身や同僚から学びの機会を奪い、イノベーションを抑圧することになります。(中略)それは他者からどう見られるかというイメージのコントロールに囚われた状態であり、組織力の向上には役立ちません」
心理的安全性が、Googleが公開した優秀なチームの条件のトップ5に入るのも納得です。
しかし、その心理的安全性はどのように「測定」すれば良いのでしょうか?
これは重要な質問です。なぜなら、定量化できることは、改善できるからです。
リーダーが気をつけるべきこと
心理的安全性の調査を行う前に、まずは場を読むことが重要です。
ミスが多発しているチームは、表面では成績が悪いように見えます。しかし、裏を返せばそのチームが積極的に新しいことにチャレンジしているサインかもしれません。気をつけるべきサインはチームの恐怖感と不安感です。
HRサービスを提供するThe Predictive Index社によると、恐怖感や不安感は以下のような予兆や症状として現れる場合があるといいます:
・会議中に従業員があまり質問をしない
・自分の失敗を認めず、他人の責任にする
・チームは難しい話や重要課題について話すことを避ける
・チームリーダーや役員が議論を支配する
・頻繁にフィードバックが行われない、要求されない
・チームメンバーをサポートするためでも、自らの業務範囲外のことには一切チャレンジしない
・必要な時でも従業員は互いに助けを求めない
・意見の違いや対立がほぼ無い
・仕事上の付き合いだけで、個人的には互いを知らない
あなたの組織で心当たりはありませんか?
アンケートを使って心理的安全性を計測する
チームの心理的安全性をより詳しく理解するために、Edmondson教授はチームメンバーを対象に次の質問に同意するか否かを調査しました:
- このチームでミスを犯すと、責められることが多い
- チームメンバーは難しい話題や問題について話を切り出すことができる
- チームでは時に、メンバーを「人と違う」という理由で拒否することがある
- このチームではリスクをとることができる
- 他のチームメンバーに助けを求めることが難しい
- お互いの足を引っ張るような行動を意図的にする人はこのチームにいない
- このチームで働く上で、自分のユニークな能力が評価され、活かせている
マネージャーは「1:全くそう思わない」から「5:強くそう思う」の5段階評価でチーム全体にアンケートを取り、回答結果について議論します。
なお、アンケートであっても発言することを恐れる従業員もいるかもしれません。その場合は、発言することの大切さを伝えたり、回答の内容が個々人に不利益にならないことを保証する必要があります。
匿名性を保証することは重要ですが、匿名にするとマネジメント層はその後フォローすることができなくなるのがデメリットです。
Elsevier ConnectのシニアディレクターRichard McLean氏は、このアンケートを自身のチームで行いました。同様にアンケートを取る際に考慮するべき点を次のようにあげています:
- 誰がファシリテーターになるのか? チームリーダー、メンバー、人事、または外部の講師なのか。その人はこのようなワークの経験があるのか?
- アンケート結果を議論するための適切な環境作りをどのように行うのか? 非常にデリケートな話になる可能性があり、期待値を定めるため、また参加者をサポートするためにどのようなガイドを設置するのか?(安全な空間のルールや合意形成など)
- 心理的安全性が低いと感じている結果が出た場合、どのようにディスカッションを進めていくのか?
- 1つの質問に対して、大数が一方に偏った場合、1人だけ他とは違う回答についてどのようにディスカッションを進めていくか?
- どのように匿名性を担保するのか?
- メンバーが取り残されるのを避けるにはどうすれば良いか?
企業の心理的安全性を把握したい組織は、通常のパルスサーベイに合わせてこのようにアンケートを取ると良いでしょう。
あなたの組織は安全な空間を作れていますか?
Edmondson教授のこのモデルは4つのゾーン(無関心、快適、不安、学習)に分かれており、心理的安全性を責任感とやる気と比較することの重要さを表しています。
無関心のゾーン — チームは心理的安全性、責任感、やる気をほとんど感じていません。チームメンバーは自分の仕事に関心を持つことや、失敗について話し合う必要性を感じないこともあるでしょう。
快適のゾーン — チームの心理的安全性は高いが、責任感とやる気が低いゾーンです。このゾーンにいる従業員は互いに心地良さを感じているが、日々挑戦できていると感じていないことが多くあります。
不安のゾーン — Edmondson教授によると、優秀でやる気がある従業員が心理的安全性を感じないことは、残念ながらよくあることです。ここにいるチームメンバーは罰を恐れて発言しないことがあります。
学習のゾーン — 心理的安全性、責任感、やる気のすべてが高い、理想的なゾーンです。自身の行動に責任感を感じ、失敗についても安心して話し合えるため、学び、イノベーション、成長に適しています。
従業員の心理的安全性を責任感とやる気と比較することで、組織の立ち位置を把握することができるでしょう。
心理的安全性の作り方
イノベーションはモチベーション、燃え尽き症候群、組織構造などの要因にひもづくと言わていますが、意図的に心理的安全性を築くことと測定することは、同様に重要な成功への鍵だということがEdmondson教授やGoogle社の2年間の研究で判明しました。
従業員が自由に発言できることで、自分が組織に貢献できている、評価されていると感じ、会話や改善に繋げることができます。
更に一歩踏み出したい方へ:職場においての心理的安全性の作り方はこちら。