“内発的動機付け”で、やる気がないチームのモチベーションを高めよう

部下やチームメンバーが本来の力を発揮していないと感じることはありませんか?それは、社員のモチベーションが低下しているサインかもしれません。「モチベーション」という言葉はよく使われますが、実際には何を指しているのでしょうか?

心理学では、モチベーションとは「目標に向かって行動を起こし、維持するプロセス」と定義されています。生産性の低下や欠勤の増加は、社員のモチベーション低下の典型的な兆候です。多くの企業は、給与や手当など外発的な報酬を使って社員を動かそうとします。しかし、本当に社員の力を引き出すのは、“内発的な動機づけ” です。

シンガポールの Nanyang Psychology Academy の共同創設者であり、虐待専門カウンセラーでもある Anthony Wong 氏は、人の内発的動機づけには以下の 5つの基本的欲求が深く関係していると説明します。

  • 愛・所属
  • 自由
  • 楽しさ
  • 生存
  • 力(影響力・達成感)

仕事を通じてこれらの欲求が満たされると、人は「もっとがんばりたい」と心から感じるようになります。

外発的モチベーションの落とし穴

企業が陥りがちな誤りの1つは、モチベーション低下を「人事部だけの問題」ととらえてしまうことです。もちろん、お金や福利厚生は重要です。しかし、報酬や罰をベースにした動機づけは長続きしないという問題があります。

その理由の1つに、人によって外発的報酬の価値が違うことが挙げられます。例えば、家族を養う必要がある中堅社員にとっては、成果給は大きなモチベーションとなります。一方で、経済的な負担が少ない新卒社員は、それほど魅力を感じないことがあります。

さらに、Wong 氏は、タバコの箱に強い警告画像を載せることで、喫煙抑制を図るシンガポールの施策を例にあげました。「喫煙をやめさせるためにパッケージを怖い写真にしても、”仲間と楽しさを味わう” 方が勝ちます。なぜなら人間は所属の欲求に強く動かされるからです。飲酒も同様です。」

また、外発的報酬は “劣化”する という問題もあります。四半期ごとの 500ドルのボーナスも、いずれ“慣れ”が起き、効果が薄れます。社員のニーズは変化するため、コストも増え続けます。

内発的モチベーションとエンゲージメントの関係

モチベーションが上がると、エンゲージメントも上がり、企業の成功に繋がります。

エンゲージメントが高い企業は、利益率が21%高く、離職率が24〜59%低いという研究結果もあります。

逆もまた然りです。モチベーションが低い職場では離職率が高まり、既存社員にも新入社員にもストレスが増します。これは組織文化にも連鎖的な悪影響を与えます。

意欲が低くエンゲージメントの低い社員は自己防衛的になりやすく、「学びの文化」ではなく「責任転嫁の文化」を生み出してしまうことがあります。そしてご存じの通り、こうした有害な組織文化は業績にも悪影響を及ぼします。

エンゲージメントが高いエンゲージメントが低い
楽観的悲観的
チーム志向自己中心的
プロ意識が高い欠勤・静かな退職
解決志向否定的態度
協力的自分本位である
学びに積極的金銭的な報酬に過度に執着する
成果は周囲に譲り、責任は自分が引き受ける功績は自分のものにし、失敗の責任は他人に押しつける

内発的に社員を動機づける方法

社員のモチベーション向上は、HRだけの仕事ではありません。企業全体として必要なものは4つあります:組織戦略、人事戦略、マネジメント戦略、個人の戦略。

マネジメント & チームができること(4つの重点領域)

信頼・フィードバックを求め、実際に改善する
・感謝を伝える
・最初にマネジメントが社員を信頼する
・懲罰ではなくコーチングで導く
・インクルーシブな態度
・ビジョンを共有
・チームに“いつでも話せる存在”だと示す
コミュニケーション・こまめに対話する
・透明性・誠実さ・率直さ
・相手の話を深く聴く
・共感を示す(個人の領域に踏み込みすぎない)
・個・チーム・未来のバランスを取る
・非言語(表情・声色)にも注意
パフォーマンス指標・しっかり承認する
・信頼・責任・協力を測る
・成長機会をつくる
・ワークライフバランス・ウェルビーイング
・自律性
・福利厚生
・組織文化
フィードバックと機会・360度評価
・定期的なレビュー
・満足度調査・パルスサーベイ
・フィードバックボックス
・オープンドア文化

信頼とコミュニケーションは密接に結びついています。信頼があるところには心理的安全性が生まれ、チームメンバーは安心して意見やアイデアを共有できるようになります。

こうした場面では、言葉の選び方や伝え方が非常に重要です。フィードバックをするときや批評を伝えるときは、Wong 氏が指摘するように、相手を責めたり、人格を否定するような表現は避けましょう。ネガティブな感情は私たちの心理に長く影響を残すからです。

彼はこうも語っています。「うまくいかなかったこと100個と、うまくいったこと100個を思い出してみてください。先に思い出すのは悪い出来事です。人間の脳はそうできているのです。」だからこそマネージャーは、成果・失敗・改善のステップすべてをバランスよく伝える必要があるのです。

最後に、マネージャーは金銭的報酬以外の内発的モチベーションを高める機会にも目を向けるべきです。社員のニーズに合った働き方や成長機会を提供することで、より深いエンゲージメントが生まれます。

例:内発的モチベーションを高めるその他の取り組み

  • エンゲージメント・プロジェクト・日々の業務に関する双方向のフィードバック
  • チームビルディングの機会
  • 自分の仕事が組織全体のどこにつながるかという業務全体の可視化
  • プロジェクトやタスクへの主体的な参加機会
  • 個人の興味・情熱の共有を促す取り組み
  • 自己成長の機会(オンライン講座、研修、ワークショップなど)

個人ができること

モチベーションの高い社員から恩恵を受けるのは企業だけではありません。社員一人ひとりにとっても大きなメリットがあります。なにせ、私たちは起きている時間の大半を仕事に費やしています。そこにやる気も、喜びも、充実感も感じられない状態では、日々の生活そのものがつらくなってしまいます。社員自身も、自分のモチベーションを高めることで恩恵を受けられます。

自己調整社会的影響
・小さな目標を設定
・小さな成功を祝う
・自分に合った“ご褒美”を設定
・セルフケア
・振り返り
・チームワークを意識する
・同僚から建設的なフィードバックをもらう
・効果的な働き方を共有する

こうした取り組みを実現するには、個人もチームも “自己認識(セルフアウェアネス)” と “自己への思いやり(セルフコンパッション)” を日頃から実践することが欠かせません。

たとえば、育児休暇から復帰したばかりの社員であれば、生活環境の変化に合わせて目標を見直すことが必要になるでしょう。また、チームとしては、勤務時間外の仕事関連メッセージへの返信を控えるよう促すなど、ワークライフバランスを尊重する文化をマネージャーが率先して作ることも重要です。健全な境界線はバーンアウト(燃え尽き)を防ぎ、「会社が自分を大切にしてくれている」という感覚が長期的なモチベーション維持につながります。

そして何より、状況が厳しいときこそ、自分を労うことを忘れないでください。自分のために行動できたこと自体が、大きな勝利なのです。

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